天声人語の書き出し&結語【名文集】
『花の防人(さきもり)』
群馬県新里村の長岡武二さんは、85歳のいまもみずから花の防人をもって任じている。老防人は、村に残る何カ所かの桜草の自生地を見回り、花盗人を監視している。
1週間ほど前、長岡さんと一緒に沢の近くにある桜草の群落を見た。小雨にぬれる桜草の葉の緑にはものやわらかな感じがあって、おだやかなうすべに色の花になじんている…
こうなったら、バイオテクノロジー(生物工学)の力にでもすがり、ありとあらゆる珍しい山野草を大量に生産してもらうほかはない、と思うことがある。山野草が安くたやすく手に入るようになれば、山野あらしもやむというのは夢物語だろうか。
【掲載年月日】1987/05/20


